東京都町村会(会長・河村奥多摩町長)と東京都町村議会議長会(会長・土屋八丈町議会議長)は、8月2日に「平成31年度東京都予算編成に対する要望書」を東京都に提出しました。
東京都の13町村では、東京都町村会と東京都町村議会議長会において、毎年、各町村からの要望をとりまとめており、町村長と議長が2班に分かれて、東京都の各局長と面会し、町村の実情を説明のうえ要望活動を行いました。
以下に、要望の重点事項を紹介いたします。
1 町村などの安定的な財源確保に関すること
(1)市町村総合交付金の充実(P7)
市町村総合交付金は、町村の行政水準を維持し、年々厳しさを増している町村財政を補完するうえで極めて重要であるため、交付金額のさらなる増額を要望する。
また、市町村総合交付金については、公共施設等の整備状況を勘案した弾力的・効果的な配分とするとともに、交付金の対象範囲の拡大、まちづくり振興割地域特選事業枠の一層の充実を要望する。
(2)地方創生のさらなる推進(P1)
町村が進める地方創生の取り組みのさらなる推進に向けて、制度的にも財政的にも十分な支援を行うように国に働きかけられたい。
(3)西多摩地域及び島しょ地域の個性と魅力ある地域づくりに向けた施策の推進(P2)
多摩の振興プラン、東京都離島振興計画や小笠原諸島振興開発計画を踏まえ、西多摩地域及び島しょ地域における各種振興策を都として積極的に推進されたい。
また、小笠原諸島振興の根幹である「小笠原諸島振興開発特別措置法」が平成30年度末で失効しようとしており、世界自然遺産であり国境離島としての国家的役割を果たすために同特別措置法の期限の延長を、強く国に働きかけるよう要望する。
(4)西多摩地域広域行政圏計画事業の推進と財政援助の充実(P3)
西多摩地域の市町村の連携・協調を一層推進し、地域の振興と均衡ある発展にむけて社会基盤整備や人づくりなど「多摩の拠点」整備が重要となるため、都の支援体制の強化と財政援助の充実を図られたい。
2 島しょ地域の振興、発展に関すること
(1)小笠原空港の開設に係る整備計画の早期策定(P6)
実務者による計画案の検討をこれまで以上に推進し、「小笠原航空路協議会」の議を経て、 計画案を早期に取りまとめられたい。
(2)島しょ地域の振興策の推進と財政援助の充実(P4)
島しょ地域の経済基盤を強化し、経済の活性化を図るため、地域力創造推進対策の推進や都単独事業の拡大、島しょ振興公社に対する貸付金、ヘリコミューター定期運航事業に対する財政支援を図られたい。
(3)特定有人国境離島に指定された伊豆諸島南部地域と指定されない北部地域の一体的な振興策の推進(P9)
平成29年4月の「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の 維持に関する特別措置法」施行に伴い、伊豆諸島南部地域が特定有人国境離島に指定され、地域社会を維持するうえで必要な施策については、国の財政措置が講じられることになった。
都は、特定有人国境離島の指定を受けていない北部地域の振興、特に、物資の費用負担の軽減、雇用機会の拡充、滞在型観光の促進などについて、南部地域と同等の支援が講じられるよう国に強く働きかけるとともに、島しょ地域で格差が生じないよう、一体的な振興を図るよう要望する。
3 安全・安心な町村の実現に関すること
(1)地震・津波・噴火・集中豪雨などに対する防災体制等の充実強化(P12)
首都直下地震、立川断層地震や南海トラフを震源とする巨大地震による災害が懸念されており、これによる被害の軽減、防止には、地震観測網の整備強化と調査研究を推進し、地震防災体制を確立することが必要である。特に、島しょ地域の標高の低い場所に立地する発電所の周辺への防潮堤設置に対する補助制度の創設など、津波被害の軽減を図るよう要望する。
また、毎年集中豪雨による被害が顕著となっており、こうした災害に対する日頃の防災、減災対策が急務であり、都は広域的な対策を早急に講じるよう要望する。
(2)大島町の復旧・復興事業の早期整備促進に対する更なる財政支援(P31)
大島町における土砂災害は発生から5年目を迎える。災害復旧・復興特別交付金制度を継続するとともに、都が実施する砂防工事の一日も早い完成を図られたい。
4 福祉の充実した町村の実現に関すること
(1)へき地医療行政等の充実(P95)
へき地医療の確保は、住民の生命と健康を守るためにへき地に所在する町村に課せられた重要な責務である。
しかし、国の「へき地勤務医師等確保事業」等の現状の支援システムだけでは、医師の確保はもとより、医療体制の充実等を図ることに苦慮しているのが実情である。
そのため、東京都が設置している「東京都へき地医療対策協議会」を活用した医療人材確保等の医療支援体制の充実が必要であるとともに、財源措置についての国に対する強い要請、都としての人的・財政的支援を要望する。
(2)介護保険制度改正に伴う支援策の充実(P103)
町村において、地域密着型サービスや予防給付、介護事業者に関する規定の実施など、これらの実効性を確保するために、都の積極的な技術・財政支援を図られたい。
また、平成30年度に介護報酬が改定されたが、大都市における人件費や物件費が他の地域と比較して高いことから、次期報酬改定に向けて地域の実情を踏まえたものとなるよう国に対して強く要請されたい。
(3)母子保健事業の充実(P111)
ゆりかご・とうきょう事業は、対象妊婦にとって効果的で満足度の高い事業であるが、この事業の補助金は平成31年度までの時限的なものとなっている。
この事業を活用した、妊娠期からの切れ目ない支援を継続するため、都において、補助金の更なる拡充等、市町村の財政負担の軽減を図る措置を適切に講じられたい。
また、聴覚障害については、早期に発見され適切な支援が行われた場合には、聴覚障害による音声言語発達等への影響が最小限に抑えられることから、その早期発見・早期療育を図るために、全ての新生児を対象として新生児聴覚検査を実施することが重要であり、そのための支援の確立を図られたい。
(4)がん検診への支援の充実(P113)【新 規】
平成29年10月に策定されたがん対策推進基本計画(第3期)では平成34年度までに対策型検診で行われている全てのがん種において、がん検診の受診率の目標値を50%とすることとされている。
町村におけるがん検診受診率は、現状30~40%台であり、受診率向上のため、国に対し自治体への支援を強く働きかけるとともに、都においても町村に対する財政支援の拡充等、適切な支援策を講じられたい。
5 農林水産業の振興に関すること
(1)農業振興対策の推進(P127)
農業については、地域特性を活かした遊休農地対策の促進のための「農地の保全と利活用 促進事業」の充実を図られたい。また、農村総合整備事業の着実な推進のため、必要な事業量に見合う都費負担分の財源を確保されたい。さらに、後継者、新規就農者への支援体制を強化されたい。
(2)林業総合振興対策の充実強化(P132)
間伐林道の増設など都施工林道の開設を充実させるとともに、森林保全対策・治山事業の強化を図られたい。また、後継者・新規参入者への研修制度などの充実を図られたい。
(3)水産業の振興(P138)
島しょの漁業は、価格低迷、資源の減少などにより厳しい経営状態が続いている。資源管理型漁業への転換、漁家の経営基盤の強化が急務である。専門技術指導員制度を創設するなど、漁協・漁業者への指導体制を整備されたい。
また、内水面漁業をより普及させるため、小規模の施設整備や施設改修、加工機械等整備に都の補助事業を創設されたい。
(4)森林環境譲与税(仮称)を活用した林業労働力確保等の充実及び財政支援
(P133)
林業労働力の確保と技術者の育成を更に推進するため、既存事業の拡充に加え、山間地域における空き家を林業者の住宅や林業事業体の事務所とするための改修費用に対し、都は、平成31年度に導入される森林環境譲与税(仮称)を活用した支援制度の拡充を図られたい。
また、温室効果ガス排出削減目標達成のため、森林環境を維持、保全している町村に対して、森林環境譲与税(仮称)を活用した助成制度の創設や補助の拡充を図られたい。
6 住民生活を支える道路、交通、住宅に関すること
(1)市町村土木補助の充実(P152)
道路新設・改良等の市町村土木事業に対して、補助採択基準及び補助制度の弾力的運用、補助対象の拡大、補助率の拡大など、積極的な財政支援をされたい。
(2)都道の整備促進等(P154)
山間部や島しょ部において都道の新設や整備促進は、住民生活を支え、産業・観光振興を推進するとともに防災機能の向上に資するものである。そのため、都道整備に積極的に取り組み、早期の整備実現を図られたい。
(3)多摩都市モノレール上北台~箱根ケ崎間の建設の促進(P59)
交通政策審議会の答申が平成28年4月に出され、多摩都市モノレールの延伸が位置付けられた。上北台~箱根ヶ崎間の延伸は前回の同審議会の答申でもA2路線に位置付けられており、答申内容に沿って、平成28年8月に「多摩都市モノレール(箱根ケ崎方面)連絡調整会議」が設置され、平成30年度の都予算において「事業化に向けた調査費」と「鉄道新線建設等準備基金への積立金」が計上されるなど、現在検討の深度化が図られており、一日も早い事業化を要望する。
(4)土砂災害に関する避難確保計画作成のための技術的支援の拡充(P159)
【新 規】
水防法等の一部を改正する法律の施行により、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下「土砂災害防止法という」)」が平成29年6月19日に一部改正され、要配慮者利用施設の避難体制強化のため、土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設の管理者等は、避難確保計画の作成・避難訓練の実施が義務となった。大島町の要配慮者利用施設では、現在各施設の避難確保計画作成に向けて取り組んでいるところであるが、実情に合わせた避難確保計画作成、避難訓練の実施、実施後の計画の見直しを行うため、有識者や都の砂防担当部局等からの現地での助言や技術的な支援を要望する。
7 次世代に引き継ぐ豊かな環境に関すること
(1)総合的観光対策及び補助制度の充実(P143)
町村は西多摩の緑、島しょの海に象徴される豊かな環境を有し、都民の憩いの場を提供している。町村はこの豊かな自然を守るために、多くの手間や費用をかけている。
豊かな環境を活かした観光は町村にとって重要な産業であり、自然の保全の財源ともなる。しかし、訪都人口の増加が町村の観光振興に結び付いている状況ではないため、観光施設や宿泊施設などの整備、情報発信など、財政的支援とともに技術的支援を図られたい。
(2)奥多摩小屋跡地の活用及び国立公園内の施設整備の充実(P82)【新 規】
雲取山の町営奥多摩小屋は、今年で建設から約60年が経過し、大規模な修繕等を行なったものの、これ以上は対応できないため、利用者の安全を考慮して平成31年3月31日をもって閉鎖することとした。
しかし、奥多摩小屋自体の宿泊者は減少しているものの、テント利用客は増加しており、奥多摩小屋の撤去により、テント泊が可能な場所が減少し、幕営禁止場所でテント泊を行う登山客の増加と、自然環境への悪影響が懸念されている。
このため、国立公園内の環境を維持するためにも奥多摩小屋閉鎖後の跡地の活用について早急に検討するよう要望する。
8 小中学校等の運営充実と施設整備の促進に関すること(P183、187)
将来を担う子どもの教育には、地域の実情に応じ、創意工夫を凝らしたきめ細かな指導が求められている。そのためにも、学校運営の基礎的制度面での地域間格差が生じることがないよう、都としても十分配慮していただきたい。
また、町村の学校施設は自然現象により都市部に比べ老朽化が激しく、部分的な改修など国の補助対象外となるものについては、良好な教育環境を維持・確保するためには都の財政支援が不可欠である。
9 東京オリンピック・パラリンピックに関すること(P45、46、47)
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、国民に多くの夢を与え、その経験は次世代に受け継がれる貴重な財産であり、町村としても大会成功に向けて全力で取り組む。
平成30年4月に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から発表された聖火リレーコンセプトでは、都内のリレー日数は15日間とされた。今後、東京都聖火リレー実行委員会にコースの選定を行うことになるが、西多摩地域及び島しょ地域の総ての町村となるよう強く要望する。なお、住民が居住する式根島や母島を組み入れるよう選定されたい。
また、世界のトップアスリートの競技を肌で感じることで、感動はより大きなものとなる。特に、新島村のサーフィン、三宅村のスポーツクライミングは国内外の競技者等からも高い評価を得ており、選手の合宿地として最適地であり、都としても合宿地の誘致に向けて大会関係者に強く働きかけるなど様々な支援などを要望する。
実施日 | 要望内容 | ファイル |
30.8.2
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東京都予算編成に対する要望 | ・表紙 pdf> 42KB
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