東京都町村議会議長会(会長・土屋八丈町議会議長)と東京都町村会(会長・河村奥多摩町長)は、7月27日に「平成30年度東京都予算編成に対する要望書」を東京都に提出しました。
東京都の13町村では、東京都町村会と東京都町村議会議長会において、毎年、各町村からの要望をとりまとめており、町村長と議長が2班に分かれて、東京都の各局長と面会し、町村の実情を説明のうえ要望活動を行いました。
以下に、要望の重点事項を紹介いたします。
1 町村の安定的な財源確保に関すること
(1)市町村総合交付金の充実(P7)
市町村総合交付金は、市町村の行政水準を維持し、年々厳しさを増している市町村財政を補完するうえで極めて重要であるため、交付金額のさらなる増額を要望する。
また、市町村総合交付金については、公共施設等の整備状況を勘案した弾力的・効果的な配分とするとともに、交付金の対象範囲の拡大、まちづくり振興割地域特選事業枠の一層の充実を要望する。
(2)地方創生のさらなる推進(P1)
町村が進める地方創生の取り組みのさらなる推進に向けて、制度的にも財政的にも十分な支援を行うように国に働きかけられたい。
(3)西多摩地域広域行政圏計画事業の推進と財政援助の充実(P3)
西多摩地域の市町村の連携・協調を一層推進し、地域の振興と均衡ある発展にむけて社会基盤整備や人づくりなど「多摩の拠点」整備が重要となるため、都の支援体制の強化と財政援助の充実を図られたい。
(4)島しょ地域の振興策の推進と財政援助の充実(P4)
島しょ地域における地域力創造推進対策の推進、都単独事業予算の拡大、島しょ振興公社に対する貸付金継続、ヘリコミューター定期運航事業に対する財政支援を図られたい。
2 島しょの振興、発展に関すること
(1)小笠原空港の開設に係る整備計画の早期立案(P6)
計画案の検討をこれまで以上に具体的に進め、「小笠原航空路協議会」の議を経て早期に取りまとめられたい。小笠原村日本復帰50年を迎える平成30年6月までには、都としての一定の見解をまとめるよう要望する。
【新規】
(2)特定有人国境離島に指定された伊豆諸島南部地域と指定されない北部地域の一体的な振興策の推進(P10)
「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」が平成29年4月から施行されたことから、伊豆諸島のうち南部地域のみが特定有人国境離島に指定され、地域社会を維持するうえで必要な施策を行う場合には、国の財政措置が講じられることになった。都は、特定有人国境離島に指定されていない北部地域の振興についても同等の支援が講じられるよう国に強く働きかけるとともに、島しょ地域で格差が生じないよう、一体的な振興を図るよう要望する。
3 安全・安心な町村の実現に関すること
(1)地震・津波・噴火・集中豪雨などに対する防災体制等の充実強化(P13)
首都直下地震、立川断層地震や南海トラフを震源とする巨大地震による災害が懸念されており、このような災害による被害を軽減防止するためには、地震観測網の整備強化と調査研究を推進し、地震防災体制を確立することが必要である。特に、島しょ地域の標高の低い場所に立地する発電所の周辺に防潮堤などを設置するための補助制度の創設をするなど津波被害の軽減を図るよう要望する。また、近年、気象変動による集中豪雨による河川の氾濫など被害が顕著であり、こうした災害に対しても、日頃の防災、減災対策が急務である。都は、広域的な対策を早急に講じるよう要望する。
(2)離島のヘリポート整備に対する財政支援、技術的支援(P20)
島しょ地域では、南海トラフを震源とする巨大地震や津波を考慮した早急な対策が必要であり、御蔵島村などの空港未設置の離島では、中型以上の救助ヘリ等が離発着できるヘリポートがないことから、ヘリポート整備に対する財政支援、技術的支援を要望する。
(3)大島町への災害復旧・復興特別交付金の継続及び復旧事業の早期整備促進(P16)
大島町における土砂災害は発災から4年目を迎える。災害復旧・復興特別交付金制度を継続するとともに、都が実施する砂防工事の一日も早い完成を図られたい。
4 福祉の充実した町村の実現に関すること
(1)国民健康保険制度改正への対応(P94)
平成30年度からの新たな国民健康保険制度において都は、国が作成した国民健康保険運営方針ガイドラインに基づき運営方針を定めるとともに、町村が都に納める国民健康保険事業費納付金や町村ごとの標準保険料(税)率を定めることになる。
この算定するにあたって都は、全ての町村の意見を十分に聞き、町村と十分協議し算定するよう要望する。また、負担が増加すると見込まれる町村には、保険料(税)が急激に増加することがないよう対策を講じるよう要望する。
また、町村が保険料(税)を算定するにあたっては、運営協議会への諮問にはじまり、条例改正の議決、さらには被保険者への説明に至るまで十分な期間が必要であることから、町村の実情を踏まえたスケジュールを作成し計画的に進めるよう要望する。
(2)後期高齢者医療制度の円滑な実施のための財政支援(P107)
後期高齢者医療においては、他の医療制度にはある都内区市町村間の住所地特例がなく、老人福祉施設等が多数立地する町村ではさらなる財政負担となっている。都としてこの不合理な仕組みを是正するよう、国に強く働きかけられたい。
【新規】
(3)DV対策への支援と広域的対応(P46)
平成25年6月の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」の一部改正(改正DV法)により、市町村も「配偶者暴力相談支援センター機能整備」、「市町村基本計画の策定」が義務化された。
DV対策及びストーカー対策は、相談者が居住している市町村以外の施設に保護されるケースもあることから、同一市町村内では被害者支援の対応が十分できないことがあり、広域的な取り組みが必要である。
都は、引続き積極的な技術・財政支援を講じるとともに、男性に対するDVの相談窓口の多摩地域への設置等、早急に体制を図られたい。
【新規】
(4)子育て環境の充実(P111)
子どもと子育て家庭を取り巻く環境が大きく変化している中で、子育て環境の充実のために町村が地域の実情に応じて実施する各種施策について、法改正などに伴い事務や財政的負担が増加している。
子ども・子育て支援新制度を着実に実施するための都の財政的・技術的支援の充実及び広域調整機能の発揮等の積極的な対応を図るとともに、ひとり親家庭等の医療費助成制度の充実など、都は、町村のこれら施策を円滑に実施できるよう国への働きかけるとともに、都として財政支援等の積極的な対策を講じられたい。
【新規】
(5)認可保育所及び認証保育所等に対する補助制度等の充実(P112)
子育て支援を進め、少子化対策の一層の推進・拡大を図ることが必要であることから、都は、認証保育所を利用する子育て家庭の経済的負担を軽減するため、認可保育所利用者との格差が是正できるよう認証保育所の利用者に対する恒久的な補助制度の創設を要望する。
また、町村が行う子育て支援施策の充実のために、子育て推進交付金制度の充実など、町村が実施する施策への財政的支援、保育園利用者に対する支援、保育士の人材確保及び子育て支援員研修などの都の施策の充実強化を図られたい。
【新規】
(6)大島町立保育園の移転建設等への補助制度の創設(P113)
平成25年台風26号における土砂災害により立地的に危険である大島町立元町保育園は、移転が不可欠である。また、昭和47年度に建設され既に43年が経過しており、園児等の健康で安全な保育園環境を確保するため、早急な移転、建替が急務である。
都は、大島町立保育園の移転建設等に対する補助制度の創設を要望する。
5 農林水産業の振興に関すること
(1)農業振興対策の推進(P128)
農業については、地域特性を活かした遊休農地対策の促進のための「農地の保全と利活用促進事業」の充実を図られたい。また、農村総合整備事業の着実な推進のため、必要な事業量に見合う都費負担分の財源を確保されたい。さらに、後継者、新規就農者への支援体制を強化されたい。
(2)林業総合振興対策の充実強化(P133)
間伐林道の増設など都施工林道の開設を充実させるとともに、森林保全対策・治山事業の強化を図られたい。また、後継者・新規参入者への研修制度などの充実を図られたい。
(3)水産業の振興(P139)
島しょの漁業は、価格低迷、資源の減少などにより厳しい経営状態が続いている。資源管理型漁業への転換、漁家の経営基盤の強化が急務である。専門技術指導員制度を創設するなど、漁協・漁業者への指導体制を整備されたい。
また、内水面漁業をより普及させるため、小規模の施設整備や施設改修、加工機械等整備に都の補助事業を創設されたい。
6 住民生活を支える道路、交通、住宅に関すること
(1)市町村土木補助の充実(P152)
道路新設・改良等の市町村土木事業に対して、補助採択基準及び補助制度の弾力的運用、補助対象の拡大、補助率の拡大など、積極的な財政支援をされたい。
(2)都道の整備促進等(P154)
山間部や島しょ部において都道の新設や整備促進は、住民生活を支え、産業・観光振興を推進するとともに防災機能の向上に資するものである。そのため、都道整備に積極的に取り組み、早期の整備実現を図られたい。
(3)多摩都市モノレール上北台~箱根ヶ崎間の建設の促進(P54)
交通政策審議会の答申が平成28年4月に出され、多摩都市モノレールの延伸が位置付けられた。上北台~箱根ヶ崎間の延伸は前回の同審議会の答申でもA2路線に位置付けられており、答申内容に沿って、平成28年8月に「多摩都市モノレール(箱根ヶ崎方面)連絡調整会議」が設置され、現在検討の深度化が計られており、一日も早い事業化を要望する。
【新規】
(4)町村公営住宅建設事業への技術的指導及び助言等支援(P58)
町村部においては、専門的知識を有する技術者が不足していることから、町村公営住宅の建設計画段階からの適切な建築技術的指導や管理が困難となっている。都は、これらの技術的指導及び助言等支援体制の確立を図られたい。
【新規】
(5)地籍調査事業費負担金に対する財政支援(P61)
国土調査促進特別措置法に基づく計画的な地籍調査について、国土調査事業十箇年計画(第6次十箇年計画、平成22年度~平成31年度)による地籍調査(一般)として、町村が直接実施する一筆地籍調査に対して、都は町村の負担割合以上の財政負担が生じないよう財政支援を講じるとともに、国に対して必要な予算措置するよう要望されたい。
【新規】
(6)建設事業への技術的指導及び助言等支援対策の充実(P153)
町村においては、建設事業に関する専門的知識を有する技術者が不足しており、特に橋梁の新設、架替え及び維持補修等について、計画段階からの適切な指導・管理が困難となっている。このことから、事業の適正化を図るためには、現地調査の段階から工事施工に至る段階まで、設計内容の技術的検討や判断、他工法との比較をはじめ、補助事業との整合性等、都による各段階での技術的な相談、指導、助言により、事業の適正化に向け支援されたい。
7 次世代に引き継ぐ豊かな環境に関すること
(1)森林の保育、保全を目的とする財源の確保(P39)
森林の多様な機能を引き出すために、林道を整備し間伐や下草刈りなどの森林整備を行うが、そのための町村独自の財源確保が急務である。
平成29年度税制改正大綱において「市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市・地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする森林環境税(仮称)の創設に向けて、平成30年度税制改正において結論を得る。」とされたことから「全国森林環境税」の早期導入を国に強く働きかけられたい。
(2)総合的観光対策及び補助制度の充実(P144)
町村は西多摩の緑、島しょの海に象徴される豊かな環境を有し、都民の憩いの場を提供している。町村はこの豊かな自然を守るために、多くの手間や費用をかけている。
豊かな環境を活かした観光は町村にとって重要な産業であり、自然の保全の財源ともなる。しかし、訪都人口の増加が町村の観光に結び付いている状況ではないため、観光施設や宿泊施設などの整備、情報発信など、財政的支援とともに技術的支援を図られたい。
8 小中学校等の運営充実と施設整備の促進に関すること(P182、187)
将来を担う子どもの教育には、地域の実情に応じ、創意工夫を凝らしたきめ細かな指導が求められている。そのためにも、学校運営の基礎的制度面での地域間格差が生じることがないよう、都としても十分配慮していただきたい。。
また、町村の学校施設は自然現象により都市部に比べ老朽化が激しく、部分的な改修など国の補助対象外となるものについては、良好な教育環境を維持・確保するためには都の財政支援が不可欠である。
9 東京オリンピック・パラリンピックに関すること(P47、48、49)
2020年東京オリンピック・パラリンピックは国民に多くの夢を与えるとともに、その経験は次世代に貴重な財産として受け継がれる。町村としても大会成功に向けて全力で取り組んでいく。
世界のトップアスリートの競技を肌で感じることで、感動はより大きなものとなる。特に、新島村のサーフィン、三宅村のスポーツクライミングは国内外の競技者等からも高い評価を得ており、選手の合宿地として最適地である。都としても合宿地の誘致に向けて大会関係者に強く働きかけるなど様々な支援などを要望する。
また、大会気運醸成に向けて全ての町村に聖火が巡り、多くの住民の記憶に残る大会となるよう、強く要望する。
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